20130101
目を覚ますと、お腹の上にはブランケットがかけられていた。
ぐるりと視線をめぐらせると、マルコが机に向かって何か書類らしきものを書き付けていた。
どうしてあんな夢を見たのか、理由はわかっていた。
「……マルコ」
小さく呟くと、彼はきちんとその声を拾ってくれたようで、歩いて近づいてくる。むくりと上半身を起こして彼を見つめた。
彼はベッドの端まで来ると、ぎしりと腰掛けてこちらに顔を向けた。
「……目が覚めたか?」
「ん、いま何時?」
「ああ……0時半ってところか?」
「……そか」
やっぱり、と思った。あんなつまらないことをぐるぐる考えたのも、頭から離れなかったのも、誕生日が、近かったからだ。
このままじっと今日がすぎれば、もう考えなくなるだろう、とぎゅっと手のひらを握った。
「エース」
「……ん?」
ぐるぐると考え込んでしまっていた自分にはっとした。
「なに、マルコ」
そう告げて笑おうとした。しかしうまく笑えなくて、しかし彼が手のひらがぽんと頭を撫でる。
「エース、お誕生日おめでとう」
その言葉に、きょとんと目を見開いた。
「……覚えてて……くれたのか」
「ああ」
「……」
「何か、ほしいものないか?」
彼の声がいつもよりやさしい、と思った。思わずぎゅっと抱きつくと、彼の手がやさしく背を撫でてくれる。
「……わがまま言っても、いいか?」
もごもごと胸元に顔を埋めたままそう告げると、彼がふふっと笑う気配がした。
「……なんでも」
「……キスして」
「……」
少し体を離すと、マルコの手がそっと頬に触れる。するりと頬を撫でる指先が、ふとさっきの夢の感触と重なってどきりとした。
すうと顔が近づいて、触れるだけの口付けをした。
すぐに離れていくその首に腕を回すと引き寄せて、再度唇をぎゅうっと押し付けた。ちゅ、ちゅ、と何度口付けても彼の唇は開かなくて、触れるだけの口付けになる。
「もっと、マルコ」
焦れてそう告げたが、彼は困ったように笑った。
「だめだ」
「……」
「おまえ、ガキなんだから」
「中身は大人だ!」
「体はガキだろい?戻ったら……エース?」
思わず俯いた俺を、彼が覗き込む。
「しらねえ!」
手元にあった枕をぼすん、と彼に投げつける。なんなく受け止めた彼を憎憎しい気持ちで眺めたが、すぐにぱっと毛布に沈んで不貞寝してしまった。
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