20130101
結局そのまま眠ってしまった。しかし夜中、ふと目が覚めた。
なんだろう、喉が渇く。むくりと起き上がろうとしたが、不意に体の力が抜けて、ベッドに手をついた。指先がびりびりとする感じがする。
「エース?」
目が覚めたらしきマルコが名を呼んだ。しかし指先のびりびりはどんどん範囲を広げて不安な気持ちが広がる。
「あ、なんか……マルコ」
ふらりと手を差し出してさ迷わせると、ぎゅうっと迷わず握ってくれた。
そのまま抱き寄せられると体が全部びりびりとしはじめて、頭をふるふると振った。
「マルコ、こわい」
「大丈夫」
そう告げてぎゅっと抱き寄せてくれる腕にしがみつく。何が大丈夫なのか解らないけど、マルコが言うなら大丈夫なのだと素直に思えた。
体がみしみしと音を立てて、びりびりと感覚が遠くなった。
「エース!」
強く名を呼ばれてはっと意識が浮上する。マルコの腕の中で少し意識を飛ばしていたらしい。
ぱっと顔をあげると、ほっとしたマルコの顔があった。
「エース、よかった……大丈夫か」
「ああ……」
返事をして、その声の高さにどきりとした。子どもの声じゃない。いつもの、声だ。
「あれ、俺……」
体を見下ろすと、マルコのTシャツがぴったりと馴染んでいる。無防備な大人の足がそこからむき出しに伸びていた。
「……冬島の海域が原因だったのかねい」
少し考えた様子のマルコがそう告げた。
「どうだろ……」
自分にだってよく解らない。だけれど。
「医務室に行くか?」
「いや……」
その近くなった目線に、するりと首に腕を回した。
「……いいから、キスしろ」
マルコは少しびっくりした顔をした後、少し笑って軽くキスしてくれた。
「……もっと」
「落ち着け良い」
「大人になったら、してくれるんだろう?」
思わずじっと見上げると、マルコがにやりと笑った。少し悪い笑顔で、どきりとした。
「……寝かさねえぞ?」
こっちも我慢してたんだ、と言う耳元で囁かれた言葉を、その後、身をもって知った。
|