20130101
20130101




結局そんな調子でもう二週間が過ぎた。
ぽーんと放り投げたクッションがぼすんと壁に当たった。
今日は十二月の最後の日、三十一日だ。ここ数日、マルコは新年会の準備や、任務の整理などでばたばたと忙しなく、部屋に戻ってくるのも夜遅く、すぐに眠って朝も早く出て行く日々だった。
おかげでゆっくり話すことも出来ない。マルコは退屈だと言った自分の意見を聞き入れてくれたようで、あれからも頻繁に自分でも読めるそうな本や、お菓子やジュースなどを部屋に用意してくれたが、いい加減二週間も経つと鬱憤は堪るばかりだ。
昨日はむかついて脱ぎ捨ててあったマルコのTシャツを勝手に寝巻き代わりに着てやって寝てたけれど、マルコは何も言わなかった。冬島の海域は徐々に抜けつつあり、寒さは和らぎつつあったのでTシャツ一枚でも平気だった。しかしだらだらと長いそれは肩が落ちるし、ワンピースのようで、なんだか動きにくい。でも、マルコの匂いがする。
そのTシャツをぎゅっと鼻先に手繰り寄せると、ベッドにごろんと横になる。そのまま、しばらくぼんやりとしていた。
――こうして暇をもてあましていると、考えなくてもいいことまで、考えてしまう。
もうすぐ、誕生日だ。
それをまた考えると、思わずため息が漏れた。
だって、自分の誕生日は、あまり好きじゃない。祝ってもらったこともあまりないし。
小さい頃、弟や、幼馴染は、俺の誕生日を知って何かとお祝いしようとしてくれたけれど。
その頃は森での貧しい暮らしだった。豪華なものなんて何もなくて、だけれどいつもよりも少し豪華なごはんや、お祝いの言葉は素直に嬉しかったように思う。
だけれど、それからずっと、そんなことは忘れていた。いや、思い出さないようにしていたのだろうと思う。
寝転んだまま、そんな風に取り留めのない思考をめぐらせていると、やはり今日もいつの間にかうとうとと眠りに誘われていた。
悲しい、のとはちょっと違う。切ない、のだろうか。彼らの色々な顔が次々に浮かんで胸がじんとする感じがした。目元がすこしじわりとして、泣いているのかもしれない、と思った。
暫くそのままうとうとと眠りの海を漂っていると、ふと、目元をそっとぬぐってくれるやさしい指を感じた。夢だろう、と思ったけれど、あたたかい指が素直に嬉しかった。