黑猫寫眞館〔11〕
ズボンも取り去ると、自分もさっと服を脱いで床に落とす。とりあえず何もないのは困るので、少し考えて、床に放ってあった自分の鞄からハンドクリームを取り出した。人に貰ったそれは、女性に人気のある店のものらしく、甘い花の香りがする。
ぎしりと音を立ててベッドに乗り、彼に圧し掛かると、軽く口付ける。
そのまま彼の下半身に体をずらし、勃ち上がっているそれを躊躇いもなく口に入れると、彼がぎょっとしたように上半身を起こそうともがいた。だけれどそのままべろりと舌で刺激すると、またベッドにくたりと沈む。
それは直に先走りを溢れさせ、ぱさぱさと頭を振る様子からもすぐにいってしまいそうなのだろうと知る。
「……いっていいよい」
そう告げると、答えを待たず、じゅっと先端を強く吸い上げた。
「……っ」
彼は声にならないような息を漏らし、びくびくと体を震わせてあっというまに達した。ごくりと躊躇いもせず飲み込む。
くたりと脱力した彼が、はあはあと肩で息をする。
声、我慢すんなっていっただろい？
そう告げると、その唇を指先でなぞる。そこは少し切れて血が滲んでいた。
「今度唇噛んだらおしおきな？」
「……」
彼がきっとこちらを睨む。それに笑ってちゅ、と口付けると、クリームの蓋をくるりと外す。
それを少し指に取ると、彼がふん、と鼻を鳴らした。
「いい匂いだろい？」
彼が少し不思議そうにこくりと頷く。
それを指先で少し暖めてから、彼の足を割り開いて体を入れる。
ちゅ、と膝頭に口付けると、再度彼自身を口に含む。少し柔らかくなっていたそれは、しかしすぐに硬度を取り戻す。
そしてクリームを馴染ませた指先で後ろに触れた。
「……あっ！」
彼が思わず、といった感じで声を漏らす。
「いい子で声出してろよい？」
そう告げると、べろりと彼自身を舐める。そして同時に後ろにゆっくり小刻みに指を出し入れしながら徐々に飲み込ませてゆく。
「……なに……」
「受け入れる準備が必要だろい？」
「……そ、それは、そうだけど……っ！」
黙れとばかりに彼自身を口に含むと彼がびくっと震える。その強張りが緩んだ隙に指をぐっと押し込む。
ゆっくりと出し入れすると、彼がんん、と甘い声を出す。
違和感からだろうか、放っておくと萎えてしまう前を咥内で刺激しながら、指を奥までゆっくりと出し入れしながら差し入れて行く。
中は熱くて、きゅうきゅうと指を締め付けて堪らない感触だ。
一旦指を抜くと、クリームを増やして指を二本にして差し入れる。彼が苦しいようで、頭を振っているが、嫌だとは言わない。
そのままゆっくりと出し入れし、中を解してぐるりと指を回すと、彼がびくっと震えた。
「……ああっ」
びくっと前の硬度も増した事に気づく。
「ここかよい？」
反応のあった辺りをぐっと指で刺激すると、彼の背がしなった。
「はあっ、何……」
「気持ちいいとこだよい」
「知らね……っ」
「おまえは気持ちよくなってろ」
「……っ」
そこを狙って指を前後させると、中がきゅうきゅうと絡み付いて来る。指を三本に増やし、十分に解したが、彼が戸惑ったような顔をしていた。
彼はおそらく初めてなのだろう。体の反応に気持ちがついて行かないようだった。
伸び上がると、潤んだ目で見上げてくる彼に口付ける。
「……ん」
あやすように口付けると、彼が少し笑った。
「……挿れるよい？」
なるべくやさしくそう告げると、彼が少し怒ったような顔をした後、すこし頷いた。
足を持ち上げて、片方を肩に掛けた。彼はぎゅっと目を瞑っているようだった。
先端を宛がうと、その熱と期待とで押し入ってしまいたい衝動に駆られる。
自分の気持ちを抑えて、ゆっくりと挿入する。
ぐっと体重を掛けて押し開くと、彼の手がぱたぱたとシーツを叩いた。
そのままぐっと徐々に押し入ってゆく。彼の熱が堪らない。
前後にじわじわと揺らしながら、ゆっくりと挿入し、最後まで入れると汗びっしょりになっていた。
彼の中は狭く熱く、その気持ちよさにはっと息を吐くと、彼がうっすらと目を開いた。
「マルコ……」
額にくっついた髪をわけると、そっとキスを落とす。
「……んっ」
中が擦れたようで、彼が甘い声を漏らす。
「……痛いか？」
「……ちょっと、へいき」
そう告げて困った顔をした彼の頬を撫でる。赤い頬の彼は熱にうかされたようにぼんやりとしているようだった。
素直な反応もその為だろうか。しかしなんて可愛いのだろうか。
軽く唇にキスをすると、ゆっくりと腰を動かす。
「……っ」
彼がまた、手でぱたりとシーツを叩いた。
その手を取って、背に回させる。
「掴まってろ」
「……おう」
ぼんやりとした口調で答える。
そのまま律動を開始すると、彼がふっと甘い息を吐く。
できるだけ、彼のいいところを狙って腰を動かすと、当たったようで彼があっと甘い声を漏らす。
前に触れると、そこもしっかりと勃ち上がっていて、少しほっとする。
そのまま徐々に動きを大きくしていく。前はもうびしょびしょで、ぐしゅぐしゅと音を立てて擦ると、彼から堪え切れない声がもれた。
「あっ、ああっ……」
その声に煽られる。
「エース、愛してる」
そう告げると、彼がぼんやりと、おそらく無意識に答える。
「マルコ……すき……っ」
その声にも煽られて、彼が吐き出したと同時に、彼の奥に叩きつけるように達した。
