黑猫寫眞館

黑猫寫眞館〔10〕

そうして、漸く正面から彼と出会った。
初め、彼は警戒した猫のようで、警戒心一杯の目で自分を見たが、そんな様もただ可愛らしく、何もかもに視線を奪われた。

古い工場の中で、彼は空ばかり見ていた。
ふっと止まった足音に、振り返って彼を見ると、彼は曇った窓ガラス越しに、空を見ていた。
窓から斜めに差し込む午後の明るい光で、彼の少し癖のある髪に光が跳ねている。
そのつるりとした黒い瞳に、くっきりと明るい窓が映りこんでいるのが見えた。
何を思っているのだろうか。そうして時折見せる、不安そうな子どもような顔に、彼は気付いているのだろうか。
その髪にやさしく触れて撫でてやりたくなる。
そうして、気付けば彼に惹かれている事に気付いた。

「いいぜ、しよう」
そうはっきりと告げた彼の声に、もうこれ以上我慢はしない、と思った。

なるべくやさしく彼に触れた。
寝具に自ら横になった彼は、怖い顔をしていた。ぎしりと音を立ててベッドに腰掛けると、彼がきゅっと体を固くする。
少し笑って手のひらで髪に触れると、彼はじっとなされるがままに大人しくしていた。その髪をさらりとやさしく撫でる。
彼がゆっくりとこちらを見た。少し笑って見せると、彼がふっと息を吐いた。息をも詰めていたのだと知る。
ゆっくりと彼に覆いかぶさると、軽く口付けた。触れる瞬間彼がびくりとしたが、そのまま触れる。
柔らかい唇を重ねて少し離すと、再度重ねて、今度は啄ばむように数度唇で触れる。彼は徐々に慣れて来たようで、彼の横に付いた腕をするりとてのひらで撫でてきゅっとシャツの袖を掴んだ。
舌で唇に触れる。べろりと舐めると、意図した事が伝わってようで、うっすらと唇が開いた。その隙間に舌を差し込むと、彼の咥内を蹂躙してゆく。性急にならぬように、ゆっくりと咥内の柔らかい所を舐めると、唇の隙間から甘い息が漏れ、彼の舌がおずおずと応えた。それに気をよくしてべろりと絡めると、彼がぎゅうっとシャツを強く掴むまで続けた。
シャツを掴まれた感触に、ふっと唇を離すと、彼がはっはっと息を吐く。いつの間にか夢中になってしまっていた。
彼が眉を寄せて、きっとこちらを睨んだが、その熱に潤んだ瞳と、赤い頬では煽っているようにしか見えない。
軽く額に口付けると、すこし汗ばんでいた。シャツの釦に手を掛けると、ひとつづつ外していく。彼は恥ずかしいのか、もじもじと少し身じろぎをしたが、なされるが侭に大人しくしていた。シャツの前を開くと、首筋に口付ける。舌でつうと伝うと、彼がびくと震える。反応を見ながら弱い所を刺激する。軽く唇で跡を残しながら胸の突起を口に含むと彼がびくりとした。そのまま軽く舌で噛んで、べろりと舐めると、すぐさま立ち上がる。敏感な反応が可愛らしい。
もう片方を左手できゅっと押し潰すように刺激しながら、尚も舌で転がると、彼はふっと甘い息を吐いた。声は出したくないようで、懸命にきゅっと口を引き結んでいるようだ。
刺激は止めないまま、右手で彼の前にズボン越しに触れると、そこは既に熱を持っていた。
手のひらでぐいと擦って刺激すると彼の体がびくっと震えた。
「……あっ」
思わず漏れた声に、彼がきゅっと唇を噛む。その唇にちゅっとキスを落とすと、ふっと笑った。
「……声、聞かせろよい」
「……なっ」
かああと赤くなってしまった彼に、ふっと笑うとまた唇を重ねる。
「……ん」
口付けに彼が夢中になっている隙にズボンの釦を外して手を差し入れる。布越しにそこをやわやわと刺激すると、彼の手がきゅっとシャツの胸あたりを掴んだ。
そのまま十分に育てて唇を離すと、つうと糸が伝った。
指で口元をぬぐうと、赤い顔でくたりとしている彼のシャツを脱がし、ズボンに手を掛ける。
彼は少しはっとしたようで、手を伸ばしたが、のろりとした動きのそれに、手をやわりと掴んで、その手の甲に口付けた。
「……任せろよい？」
そう柔らかく告げると、彼がぱっと手を引っ込めた。