in the dark



サッチに連れられ船に戻ると、とりあえずすぐさま医務室に連れて行かれた。
あれこれ調べられ、検査の結果から、とりあえず失明した訳じゃないと説明されると、少しほっとした。
目の機能は保持されており、瞳孔反射も問題ないらしい。
しかし、見えない事実がそこに横たわっている。つまりは、原因不明の失明状態で、回復方法も解らないということあった。

とりあえず、検査の間も目を開けたままあちこちぶつかってしまうおれを危惧して、目を開かぬようにと目の周りを包帯でぐるぐると巻かれ、医務室を退出した。
そして、サッチが手を引いて、部屋まで連れて行ってくれた。
部屋に入ると、なんだか懐かしい匂いがするような気がした。そうして漸く自室のベッドに腰掛けると、ようやくほっと安堵の息を吐いた。
「じゃあ、今日はゆっくり休めよ」
サッチのやさしい声がする。
「おう」
返事をすると、手さぐりで毛布を手繰り寄せ、もそもそともぐりこむ。
「電気消してくからな」
「ん」
パチ、と軽い音がした。そして続いてドアを開く音。
「……サッチ」
「ん?」
小さな問いかけに、それでも彼が足を止めてくれたのが解った。
「あの……マルコは、どうなった?」
ずっと気になっていて、だけれど聞けなかった事を、漸く問うた。声が少しだけ震えた。
「……」
彼は少し黙った。その沈黙は長い時間ではなかったがびりびりと耳に痛い気がした。心臓がどんどん早くなる気がして息苦しかった。
「……マルコは、無事だぜ」
「……っ、そうか」
サッチの言葉に、思わずはっと息を吐いた。そして、漸く息を止めていた事に気付く。
「よかった……じゃあ、マルコは今どこに?」
「……んー、自分の部屋にいるぜ。怪我もねえし大丈夫だ」
彼は、数少ない自分とマルコが恋仲だと知っている奴のひとりだ。隠しているわけじゃないが、おおっぴらにしている訳でもない。
つきあってもう一ヶ月。順調に恋人、なんだと思う。
「そうなのか?」
「あいつも戻って来たばかりだ。今日はゆっくり休んで、明日合わせてやるよ」
「……おう」
なんだろう。うまくは言えないが、何かが引っ掛かる。
だけれど、彼が無事だったという安堵に、すぐさま眠りに落ちて行った。