この手に触れるもの

※大人向けご注意












後ろからゆっくりと抽送されると、堪らず声が漏れる。
「は、あっ…んん…」
枕に顔を押し付けて、声を殺そうと必死になる。
ベッドにうつ伏せになり、背中に彼がぴたりとくっついている。
誇りが重なることは少し嬉しいけれど、顔が見たくて振り向いて見る。

彼と恋人になって、もう幾度体を重ねたかわからない。
だけれど、その度に理由のわからない涙が溢れて、いつだって、彼がよく見えない。だから不安になる。

今日は押さえられた腰に、彼の顔を見ることは敵わなかった。
諦めて切れずに首をぎりぎりのところまで回して見る、と、不意にぐいと中を擦られ思わず、声が漏れた。
「あっ…」
恥ずかしさに唇を噛むと、彼の手が髪に触れた。少しだけ撫でられる。
そのまま、すうと抜かれる感覚に、思わず惜しむように彼をぎゅうと締め付けてしまう。
あさましい自分の体の反応に思わず顔を俯けたが、彼の手がゆるりと肩に触れて、ごろりと体を返された。
すると、ぐいと片足を持ち上げられ、今度は前から再度彼が入り込んで来た。
既に受け入れていたそこは、彼をなんなく飲み込む。圧迫感と、それを上回る気持ちよさにまた目の前が滲む。
ぐっ、ぐっと押し込まれる度に気持ちよさに声が漏れた。
「はあっ…あっ」
最後まで入り切ったらしく、彼が動きを止めた。
ふうふうと少し荒くなった息に、彼が頬をするりと撫でた。ぼんやりと目を開いたが、薄い水の膜で視界がぼんやりとする。
「…マルコ」
不安になって名を呼ぶと、エース、と名を呼ばれた。ほっとする。
「マル…」
もう一度名を呼び終わらない内に、軽く宥めるようにくちづけられた。
それはとてもやさしいキスで、思わず口元で笑む。
「もっと…」
「ん?」
ぽつりと呟くと、彼が顔を近づける。
「…キスして、もっと」
「お前…」
「…え?」
不意に途切れた声に不思議に思って問い返したが、すうと腕を取られると首に回される。
なんとなく促されるまま彼の首にしがみつくと、彼が耳元で呟いた。
「しっかり掴まってろよい」
「え…?」
その意味が解らず聞き返したが、途端、強く穿たれて声が漏れた。
「あっ」
そのまま強く揺さぶられて、頭の中が白くなる。
突然激しくなった行為に溜まらず回された腕で彼の首にぎゅうとしがみ付いた。
「な、何っ、ああっ」
揺さぶられながら彼に問うと彼が動きを止めぬまま耳元で呟いた。
「お前が可愛いのが悪いんだよい」
「…んっ…はあっ…!」
文句が言葉にならない。
それでもなんとか彼を睨むと、笑ってまた、キスをくれた。